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コラム :「〇(まる)の遊び方」

コラム:「〇(まる)の遊び方」

夫婦カウンセリングを行っていると、ふとした瞬間に、夫婦の間で「リスク」に対する物差しが随分と違うことに気づかされることがあります。

法律や慣習、倫理にかなった、誰からも後ろ指を指されない振る舞いを「〇(まる)の遊び方」と呼び、逆にそれらに反するものを「×(ばつ)の遊び方」と定義してみましょう。私たちは学校で〇の大切さを学び、×の世界は禁じられるものだと教わります。けれど、一歩社会へ出ると、その中間にある「△(さんかく)の遊び方」を選ばざるを得ない、あるいは自ら選んでしまう場面に出くわすことがあります。例えば、深夜に「ここから入れば最高の景色が見えるんだ」と立ち入り禁止の柵をひらりと越えてみたり、秘密の抜け道を通ってスリルを味わったりするような行為。法律上は×に近いものですが、仲間内の感覚では△という「ちょっと悪い遊び」の範疇として片付けられているのかもしれません。

あるカウンセリングでのことです。ご主人は少し納得がいかない様子でこう話されました。「家のガスが壊れたと妻から連絡があって。なんとか早く帰ろうと、会社には体調が悪いと嘘をついて早退したんです。車を飛ばして急いで帰宅したのに、妻は感謝一つしてくれませんでした」。対する奥様は、どこか不思議そうにこうおっしゃいます。「会社には正直に事情を説明して、時間休をとって帰ればいいだけじゃないですか。なぜそんな嘘をつくのか理解できません。それに、慌ててスピードを出して運転して、もし事故でも起こしたらどうするんでしょうか」。ご主人は「自分なりに問題にならない限界を見極めて、その範囲内で最大限の工夫をしたんだ。その苦労をなぜわかってくれないんだ」と、肩を落としていました。

これまで多くの方のカウンセリングを担当してきましたが、男性は「△の遊び方」の中で自分の機転や実力を発揮しようとし、女性は「〇の遊び方」という確かな土台の上で安心して力を注ごうとする傾向があるように感じます。脳科学的な知見によれば、男性ホルモンであるテストステロンが脳内の報酬系に作用し、リスクを伴う意思決定やスリルに対して脳が快感を得やすい傾向があるようです。対照的に、リスク回避や安全確保に関しては、感情や社会的規範を司る領域がより慎重に働くといった性差に関する研究成果も報告されています。こうした〇や△に関する基準のズレは、積み重なると夫婦の不和の大きな原因になり得ます。

私は男性として、同じ男性に対しては「△の魅力を過信せず、時には〇のど真ん中で遊ぶことが、実は最も高い評価や信頼に繋がることもあるんですよ」と言いたくなることがあります。ですが、そう伝えると、多くの男性は「その△のスリルや駆け引きが、たまらなくいいんですよね。子供の頃からルールの外で遊ぶのが好きでしたから」と、どこか懐かしむような反応を示されるのです。

今は連休の最中ですね。連休中というのは、普段味わえないような刺激を求めたくなるものですが、あえてルールのど真ん中で「まっとうなこと」をまっとうに楽しんでみるのもよいかもしれません。いつもは効率や近道といった△の要素を考えてしまうところを、あえて真っ直ぐな〇の道を選んでみる。そんな「遊び方」が、意外な心の充足をもたらしてくれるのではないでしょうか。