コラム)歪んだクラブで、まっすぐ飛ばす
ゴルフのアイアンをじっくり見たことがあるでしょうか。野球のバットは、まっすぐな棒です。でもアイアンは違います。柄の先に付いた打つ部分が横にずれ、しかも傾いています。初めて見た人なら、「なんでこんな歪んだ道具で、まっすぐ飛ぶんだろう」と不思議に思うはずです。でも、その歪みがあるからこそ、ボールは美しい弾道を描くのです。
まっすぐな棒では、あの球は打てません。しかも高く上げたいからといって、すくい上げるように振ってはいけません。むしろ、上から潰すように打ち込むからこそ、ボールは空へ舞い上がります。理屈に反しているようですが、クラブの歪みを理解している人だけが、この「逆」を使いこなせます。
人間も、まったく同じなのではないでしょうか。多くの人は、自分をまっすぐな道具だと思い込み、正面から素直に頑張れば報われると信じがちです。でも、人間はまっすぐな棒ではありません。抑えのきかない衝動、理屈に合わない執着、世間の型からはみ出すヘンテコさ、みっともないほどの生身の欲。誰もがそういう歪みを削りきれないまま、それでも真剣に生きています。
その歪みをなかったことにして振るから、球は思った方向へ飛んでいかないのです。
だったら、自分の歪みを想定して、うまく振り抜く方法を探すしかありません。
自分の歪みを踏まえたフォームは、たいてい直感と真逆を向いています。そこには、まっすぐな棒では生まれない軌道があります。自分という道具の歪みを受け入れたとき、人はようやく自分だけの弾道を描けるのかもしれません。
