本音を話せない新入社員について
4月になりました。多くの企業では新入社員が入社式を終え、新たな環境で研修を受けています。その際、指導者が新入社員に「何か質問はありますか?」と聞くと、新入社員が無言になってしまうことが少なくないようで、産業医面談でもそのようなお話を度々耳にします。このように指導者の質問の意図や前提がうまく伝わらず、新入社員を緊張させてしまった場合、どのように対処したら良いでしょうか。私は配慮に満ちた適切な雑談が有効であると考えています。
一般に、話題や目的が限定されない気楽な雑談にはさまざまなメリットがあります。
・本音を話しやすい
・言いたいことを言えて気が楽になる
・物事を多面的に捉えられる
・自分が何を知っていて、何を知らないかが分かる
・話し相手の立ち位置や意図をおおまかに理解できる。
・相手の体調や精神状態がわかりやすくなる
しかし、雑談は以下の通り、想像力や推測能力を要するために、苦手な人が多くいらっしゃることも事実です。
・雑談は事実に基づく話だけでなく、不安や期待に基づく想像上の内容も含まれる
・その会話が雑談であることを当事者間で認識できていないと、雑談は成立しない
・雑談において話し相手の立ち位置や会話の目的を推測する必要がある
・相手が話したいことを、表情や声のトーンなどの言葉以外の情報から推測する必要がある
・相手の意図を推測し、その不確実な推測結果に基づき適宜対処する必要がある
・会話において、話し手、聞き手の切り替えのタイミングを推測する必要がある
・雑談が終了し、その後話題が真面目な話に移行した場合、その変化を適切に推測しなければならない
新入社員の教育において雑談を展開する際、会話の最初に「これは雑談だけど」「ちょっと雑談していい?」「軽く雑談しませんか?」など、これからの会話が雑談であることを相手にはっきり伝える方が無難と言えます。そして、雑談が苦手な人や雑談を嫌がる人には、雑談を押し付けることを控え、時間をかけた丁寧なやりとりを心がけることが大切です。また、雑談を苦手と感じる人にとっては、心理カウンセリングを受けることで雑談のスキル改善が期待できます。いずれにしても、雑談や真面目な話がうまく組み合わされ、コミュニケーションが最適化されることが、新入社員の本音をしっかりと受け止める上で重要なことと言えるでしょう。