知能テスト結果の見方
知能テストは、知能のプロフィールを客観的にデータ化できるため、知能テストを受けることで被検者は自分自身の適応についての理解を深めることが可能です。
知能テストではIQ(全検査IQ)が算出されますが、知能テストの結果の解釈において最も重要なことは、I Q(全検査IQ)の点数ではなく、知能テストによって数値化される以下の4つの指標の得点間の差異(ばらつき)であると言われています。
1. 言語理解
2. 知覚推理
3. ワーキングメモリー
4. 処理速度
知能テストの結果の解釈の方法は多岐にわたりますが、例えば、言語理解が高く、知覚推理が低い場合については、臨床現場において以下のように解釈されます
このような被験者は、一般に、物事を言語的に理解・処理することが得意なのですが、言語能力と比較して、物事を視覚的に判断・推測する能力が相対的に低いため、人の表情や状況よりも人の言葉そのものから人の本音を推測しようとする傾向があります。
物事を言語的に理解・処理すること自体は、社会適応上、決して間違ったアプローチではありませんが、言語的な情報が乏しい場合においては、言葉の通りに理解したことによって当事者に事実誤認やストレスをもたらす場合があります。
このようなタイプの人が、物事の重要なポイントを言葉ではっきり言わない人と接する際には、視点を変えて物事を見直したり、自分の理解が相手の意図したものと合致しているかを相手に都度確認したり、相手に対して意識的に丁寧な言語的説明を求めることなどが有効です。
以上の内容は、心理臨床では一般的なことですが、私は、知能テストの結果の解釈においてさらに重要なことは、4つの指標の得点間の差異から、被験者のストレスの発生状況を深掘りすることにあると考えます。
上記の例で言えば、言語理解が4つの指標の中で突出して高い方は、自分と同等の知能水準(全検査IQ)の人に対して、自分と同等の言語能力を有すると推測しがちであるように思います。そのため、このような人は、言語的コミュニケーションに関して、相手に過剰な正確性を期待してしまい、結果として、コミュニケーションにストレスをを感じやすい傾向にあります。このようなケースでは、ストレスの要因が言語能力の高さにあり、当事者にとって気づきにくいストレス要因であるため、ストレスによる心身の不調が長引きがちです。
一般に、特定の能力が低いことによる問題点は、学校教育において客観的な評価基準によって当事者にフィードバックされるものですが、特定の能力が高いことによってもたらされる適応障害は、当事者にとっても気づきにくく、見過ごされがちであると言えるでしょう。
そのようなケースでは、その当事者の真の才能が発揮されず埋没されている可能性もあります。
世間では、知能テストは、IQを測るための検査であると誤解されているように感じますが、知能テストは、単に、IQや能力の高低を測るだけではなく、その人の傾向や能力の高さからもたらされる悩みやストレスを検討する上で有効なものではないでしょうか。
背が高いからこそ天井が低く感じる、そのような生きづらさをじっくり考える場が、現代においてはとても重要だと私は考えています。